医療コンサルティング

担当者の言葉

   「革新的な提案」も「ハッとする改善提案」も地道な調査や膨大な資料の統計分析、各専門家の考察を経由して創造されるものと考えています。
投資に対するリターンという利益(評判敬意・満足度・収益)を優先的に得る場合の手法は、激しい競争にさらされている業界で活用されているSCM、
CRMがベースになります。 そして病院スタッフの皆様は各専門家です。私たちは皆様の苦手な部分を補います。皆様と一体にモチベーションを高め、
共に専門性を活かして、押し寄せる課題を解決していきます。

 一般的にコンサルタントが陥りやすい方向性として、コスト削減だけに目を向けた内向きの施策があります。
病院スタッフの方々は各々専門家ですから、すでに何らかの有効な施策は実行済みです。そこにコスト削減だけに目を向けた、絞り切った雑巾を更に絞るような過酷な要求を病院スタッフに負わせる施策を提案し、病院が実施してもしなくても、コンサルティング業務を完了させてしまいます。私たちは、この施策は逆効果をもたらすと考えています。
いわゆるギリギリの職員には退職以外の脱出選択肢は無い為、改善を目指す余裕も他のスタッフをフォローする余裕も、何より患者様に贈る笑顔も消え失せます。 もっと外向きで視野を広くした施策を打ち出すべきでしょう。現場の課題をPDCAの繰り返しで、解決へと導くのは多くの現場のあり方とぶつかり、たいへん困難な事だということです。大きな単位、地球とか人類とは言わないまでも、県内、地域内、病院としてPDCAを繰り返し、末端の課題へと落とし込む必要があります。この手法の概要については、「統計分析、各専門家の考察」のページに記載しました。そこに病院としてのあり方が明確になり、一体感が生じ、課題の出口という効率や利益を生む施策があります。

 一方、既に発表済みの国の施策を先取りして、将来を読み切った準備をしていくべきと考えます。例えば、下記の情報があります。

  • 2014年度 診療報酬改定
医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等が重点課題
  • 2014年度 4月より消費税率の増加
  • 2014年度 2次医療圏を超えた地域連携ネットワークモデルの検証
  • 2015年度 複数(退院サマリ・読影レポート)のフォーマットを定義

この動向から、今後は紹介元である診療所の診察室には確実にパソコンがあり、多くの場合、電子カルテが使用されています。
外部とのネットワークも構築され、患者情報を確認する方法が備わっています。病院内の電子カルテシステムも院内ネットワークだけでなくインターネットへの接続を通して地域を形成していくと考えられます。この地域とは地理的な地域や医師会の地域とは関係なく、機能分化を支えるコンピューターネットワークグループが地域であるという認識が広がるものと思います。
「SCM、CRM」のページで主にCRMの解説に記載しましたが、増収増益の為のカギはCRM、 医療の効率、品質、安全のカギはSCMが握っていると思います。 尚、コストの確保については、リターンという利益がコストを上回っていれば確保できるものと考えます。利益が出る確実性を支える為には積み上げられた分析検証のエビデンスが必要です。その上に、ベストプラクティスである施策があってこそコストの確保も容易になるものと考えます。


統計分析、各専門家の考察

 統計分析の目的も各専門家考察も解りやすい「見える化」に表現しなければなりません。これは隠された深い内面や本質を表面化させる事です。
「見える化」は本来の意味であるInterviewという事ですが、Interviewは曲解されて、アナウンサーのインタビューになった為、ここでは「見える化」という言葉を使用します。

「見える化」の方式

 数値はグラフ化し、一目で内容を把握できます。しかし言葉や文章を数値化する事は容易ではないと思います。同様に有形無形について病院に当てはめて考えると、立派な建物や高度なモダリング機器という有形資産と名医や親切等という無形資産をかかえています。
いわゆる有形「箱もの至上主義」だけではなく、無形資産の効率利用を主観的に認識、測定、評価し、競争原理の中でマネージメントする必要があると考えます。この無形資産を何等かの方法で「見える化」し、社会にアピールし、価値の増加と創造を考えていきます。技術的裏付けとしてABC(Activity Based Costing)とBSC(Balanced Scorecard) というキーワードを挙げておきます。

(1)効率要素の抽出とデータ化の作業

無形資産の調達コスト(原価)を把握し、特定の無形資産がうみ出す価値(売上額)、価値が解りにくい時は特定の無形資産が無い場合の損失額で概算する。そしてDWHや要望問合せデータの分析を行います。

1.財務分析視点による医師個人及び科の業績評価
 ⇒医事データベース内のデータ抽出指示(医師別、科別総業績と医師別患者単価)

2.患者様視点からみえる病院
 ⇒地域連携室のデータ抽出指示(紹介患者数の医師別、科別数)

3.診療プロセスの視点(診療の品質や診療効率に関する視点)
 ⇒DPC適用の同一病名のコスト抽出(医師別)
 ⇒クリニカルパス適用、ユニット適用のコスト抽出

4.職員の成長と学習の視点
 ⇒効率やスピードを求めた要望の抽出
 ⇒医療安全を求めた要望の抽出
 ※内部からの人材(人財)登用

(2)効率主義の歯止め要素の設定、根拠とスケール

1.クリニカルインディケーターの設定

  • 例:退院後40日以内に予定しない再入 院となった割合(2.5%等)と急性期入院日数
  • 例:褥瘡発生率
  • 例:医療安全上のレベル別発生数
2.職員の定着率

3.臨床研究

4.優先するべき病院の存在理念

これらを加味した評価を行なうことで、病院のもつ有形資産、無形資産、未来への投資などを含めた今を「見える化」し、総合的に評価します。評価のエビデンスを支える為に根拠のあるデータを集積します。

(3)現状分析方式と未来値の予測方式、改善施策効果の測定

 効果のある施策を選別する方式であり、コンサルタントも自らの評価の根拠を得る必要がある為、下記分析法による未来予測を行う事が望ましい。

1.次数の予測値つまり、評価対象となる次回の予測値をもとめます。方式はWeighted moving average methodで良い。

2.波が存在すればHolt Winters methodで周期を求める。そして波の原因分析を行う。

3.課題に対応した施策を実施し、効果を求め、報告や次回の施策に反映させる。


SCMとは

 仕入れ数量と販売量を一致させる仕組みがSCMです。品切れが無いように時差による一致しないブレ幅を在庫によって調整します。 これにスピードとコストを考え併せると、より実践的なものになります。
 医療業界に置きかえると、曜日や季節、休日、経年によって外来、入院患者の人数や
病名等の要素(販売量)が変化します。それに合わせて、効率、スピードを重視した受入体制(仕入れコストに圧縮)を準備する事になります。
準備ですから、未来予測の品質が重要です。それは人材や安全、設備という余力(在庫)保持にコストがかかるからです。情報システムを駆使して精度の高い統計分析を行い、未来予測をします。そこに「最適」があります。


CRMとは

  顧客に対しサービスの継続的な利用を促すことで収益の拡大を図る手法がCRMです。情報システムと一体的に運用するCRMの代表的な成果が「ポイント制度」であると思います。「ポイント制度」は「顧客の囲い込み」や「顧客単価向上」を高める効果があり、この考察からCRMの理解を進めるのが良いと思います。
CRMを医療業界に活用すると、病院とのあらゆる接点でのデータに基づいて患者をセグメント化し、患者の層別、要望、行動パターンを分析するという作業を経て、個々の患者に適した診療を効率よく提供し、付随サービスと併せて満足度を高めることで、一人あたりの患者単価を最大化、長期的な診療情報を保持し、リピート率の高い主治医ならぬ主治病院を目指すものです。波及効果として新規患者が地域の評判を高め、他の患者を紹介するという優良患者になるまでのシナリオを描き、その育成パターンの類型化を行ない、状況に応じてきめ細やかなマーケティング策を具体的なアクションとして実践します。
 しかし、これでは普通のCRMです。つまり、病院と患者の関係を「1対1」の関係性で考察して進めましたが、ここで手落ちなのは、病院側が何でも準備できる事が前提という進め方になっているからです。地域における役割、専門性というポジショニングを無視したソーシャル性の無いものになってしまいます。CRMも進化し、ソーシャルメディア(地域連携システム)を接点として「N対N」という新しい関係性が構築される必要があります。私達が分析や考察を繰り返して得た重要な要素の一つを紹介しましょう。それは「紹介元満足度」という要素です。この要素の強化は紹介元の収益増加と患者に対するステータス信頼の向上という事につながります。この要素を発展させる手法やシステムが新しいCRMの一つであると考えます。


押し寄せる課題

 押し寄せる数々の課題を追及すると最上位では「社会は高額医療を受け入れられる体力はあるか?」という一点に収束します。そこから派生する数々の課題として地域医療の崩壊、医療機関の経営破綻、医師不足と勤務医の疲弊、地域・専門の医師の偏り、女性医師の離脱、国民健康保険の機能不全等があります。
 高額療養費制度を利用して何千万もする「がん治療」を全ての患者に提供できる事は困難であるし、行政指導の強化で、医療業界で大きな利益を上げる事が可能なビジネスモデルはもはや存在しないと考えます。生かさず殺さず、の状態に思えます。しかもTPPの受け入れで既得権まで侵されては打つ手が無いように思えます。
 つまり、経済学を文系の学問とした観念的な日本の専門家から見れば、かなり悲観的な見方になってしまいます。しかし、実証的にデータを解析して解答を導く理系の経済学としては、まだまだ成長する業界として見ることができます。ここで海外の常識は「経済学は理系の学問」である事をここに付け加えておきます。結局、今日の医療業界は「儲ける為にデータを分析しなかった」という事です。社会は優良な医療機関を強く求めています。まずは、生き残る為の戦略をデータの分析をしながら打ち続けなければなりません。表面上の近々の課題が患者数の減少であれば、残念ながら自らの病院が淘汰される側に立っている証拠です。深く認識していただきたいと思います。私たちも、何としても、患者数と患者単価を増加させ、情報システムによる効率化を進めなければなりません。地域の絶対必要な収益性の高い病院に育てて行きましょう。